ナノ空間を反応場・デバイスとして活用する物質科学国際研究拠点の構築 | 頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム

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概要

内閣府が掲げるエネルギー・環境イノベーション(NESTI2050)の実現に向けて、物質科学の重要性は益々高くなっています。本事業グループでは、合成化学、錯体・超分子化学、光化学、電気・界面化学の研究分野において優れた成果を挙げてきました。持続可能社会の実現を目指し、より高度な物質科学の発展を遂げるには、炭素資源の有効活用、蓄電デバイスや光エネルギー変換技術の開発が重要だと思われます。しかしながら、これらには解決しなければならない共通課題があります。それは、「如何に限られた空間へ分子や電子を効率的に捕集し、電子伝達を伴う反応を制御できるか」という難問です。つまり、効率的な基質の取り込みと電子授受を伴う反応や電子貯蔵が制御できれば、エネルギー・環境問題のブレークスルーとして期待できるのではないかと考えました。本研究では、数〜数十ナノメートルの配位性空間やナノ多孔空間に着目し、不活性小分子を効率良く捕集し、炭素資源変換反応を可能とする反応場を創出すると共に、電子・Liイオン・小分子を原子レベルで貯蔵・輸送するためのデバイス開発を遂行していきたいと思います。

本事業は、長崎大学第3期重点研究課題「次世代エネルギー関連技術に向けた革新的物質科学研究拠点」を基盤とし、合成化学、錯体化学、界面化学、電気化学分野において実績のある先導的グループが中心となって推進しています。配位性空間を利用した合成化学・錯体化学において先駆的立場にあるドルトムント工科大学とゲッティンゲン大学、蓄電デバイス分野において世界牽引的立場にあるポール・サバティエ工科大学、界面化学分野で最高峰のマサチューセッツ工科大学とテュービンゲン大学の特色を活かし、これらの連携大学との共同研究を通じた国際交流・人材育成を推進していきます。長崎大学と海外連携大学を強固に結んだ国際ネットワークを構築することで、ナノ空間を反応場及びデバイスとして活用した高難度合成反応の開発と光・電子デバイス創製のための世界的研究拠点を形成していきます。

本研究では、配位性空間やナノ多孔質空間を反応場や電子貯蔵場として利用した物質科学の新展開を目指していきます。具体的には、高効率光捕集機能を備えた「配位性空間」を設計していきます。配位子パーツと金属イオンの組み合わせから構成される空間内に金属錯体を容易に担持させることができるだけでなく、空間内を光反応フラスコとして活用し、反応性に乏しい小分子の効率的変換を開発していく予定です。光応答型多電子還元のための反応場を設計し、二酸化炭素の多電子還元反応をはじめ、光エネルギーを活用した有用物質変換を研究します。また、ナノ形態制御による高出力・高容量が可能なキャパシタや高感度検知ガスセンサの開発に取り組むと共に、ナノサイズ化によって新機能が創出されるカーボン複合ナノ多孔性材料を用い、可逆的多電子反応系の構築や全固体型Liイオン二次電池材料の開発へと進展させています。

長崎大学は第3期中期目標において、国際社会の現場に強いグローバル人材育成を掲げています。現在継続中のケニア及び東アジアを中心とした国際交流事業に加え、本事業において欧米を中心とするナノ空間を利用した物質科学のネットワーク構築により、全世界に向けたグローバル研究拠点を展開することが本事業の最大の目的です。

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